VRビジネス

VRの建築・建設現場での活用事例

VRはゲームだけでなく、様々なビジネスにも活用されています。建築・建設業界では、完成予定の建物をVRで再現したり、遠隔地から重機を操作したりと、活躍のシーンは広がっています。

ここでは、やVR設計ソフトなどをご紹介します。

大成建設のVR活用事例

大手ゼネコンの大成建設は、様々なVR技術を開発し建築分野に積極的に活用しています。ここでは同社のVR技術の活用事例や開発中のシステムを紹介します。

完成予定の建物をVRで再現

大成建設は、建物内部の様子を実物大で再現できるHybridvision(ハイブリッドビジョン)を開発しました。高さ2.4m×幅5.6mの大型スクリーンに建物の実物大の映像を映し液体シャッターメガネで立体視することで、計画・設計段階の建物のイメージを体感することができます。さらには、目に見えない気流や温熱などに関するシミュレーション結果を融合して表示することが可能です。

引用:Hybridvision/©大成建設株式会社

一般に計画・設計段階の建物に関する情報を共有して意思決定を行う際、図面だけではイメージが湧きにくい場合は、設計図をもとに立体模型や三次元のCGデータを作成するなどの方法がとられてきました。しかし二次元のものを三次元に変換する際に必要な情報が抜け落ちてしまったり、変更や修正の方法が煩雑になってしまったりといった問題がありました。

VR技術であれば、三次元モデルのデータを作成し、それをそのままVRで再現することで問題を解決することができるのです。

引用:Hybridvision/©大成建設株式会社

例えば、データセンターへの空調設備の配置を検討する際、このHybridvisionを使えばサーバの局所的な温度上昇なども可視化して総合的な気流のシミュレーションが可能となり、無駄のない省エネサーバ室の実現に役立てることができます。

引用:シミュレーション技術/©大成建設株式会社

VRで重機を遠隔操作

大成建設では他にも、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着してショベルカーなどの重機を遠隔操作できる臨場型映像システム「T-iROBO Remote Viewer」を開発しました。

引用:プレスリリース/©大成建設株式会社

重機に取り付けられた2台の魚眼カメラからの情報がリアルタイムにヘッドマウントディスプレイ表示され、まるで現場にいるような感覚で土砂の採掘や撤去が可能となります。重機の周囲に複数台のカメラを設置する必要があった従来の重機の遠隔操作とは違って、人の近づけない危険な災害現場などでの迅速な活躍も期待されています。

引用:プレスリリース/©大成建設株式会社

モノの硬さを感じられるロボットで遠隔作業

さらに大成建設ではイクシー株式会社と共同で、モノの硬さを感じられるロボットの遠隔操作システムの開発に着手しています。

引用:プレスリリース/©大成建設株式会社

手が物に触れた際に生じる反力を再現することで、装置を身につけた人がVR空間でものに手で触れた感覚を得ることを可能にします。このシステムが実現すれば、前述のVRでの重機遠隔操作よりも精密な作業が可能となります。

建築業界向けのVR設計ソフト・サービス

ソフトウェア開発業界でも、BIMデータを利用した建築業界向けのVR設計ソフト・サービスが次々と開発されています。BIMとはビルディング・インフォメーション・モデリングの略称で、三次元モデルの建物データにコストや管理情報などの属性を含んだオフジェクトの集合体です。

ここでは、建築業界向けVR設計ソフト・サービスを2つご紹介します。

Revit LIVE

オートデスク株式会社の提供するRevit LIVEは、BIMデータからVR向けの3Dデータを作成する建築業界向けのクラウドサービスです。

従来BIMデータを他のパソコンやタブレット端末などで閲覧できるようにするには時間と手間がかかりました。LIVEでは数分で、しかも簡単な操作で質の高いリアルな3Dデータを作成することができ、建物の完成後のイメージを共有することができます。直感的でシンプルな操作が可能で、90ヵ国以上の国々で利用されています。対応のVR機器はHTC ViveとOculus Riftです。

SYMMETRY

SYMMETRYは、3D-CADデータと3DモデルファイルをVR出力して編集やシミュレーションができる建築・土木業界向けソフトウェアです。

建築模型を見下ろす「スタジオモード」と実寸大で建物の内外を歩き回れる「イマース(没入)モード」が用意され、写真撮影やメモの機能も付いています。HTC Viveに対応しており、無料で提供されています。

世界の建築物を訪問できるVRコンテンツ

VR技術を利用すれば、建築作業の効率化のみならず、世界の建築物を訪れることもできます。VRアプリや動画なら、家にいながら世界各地の建築物を見て回ることが可能です。バーチャル旅行ができる、おすすめのVRコンテンツを紹介します。

 Google Earth VR(アプリ)

Google Earth VRでは、まるで空を飛んでいるかのような視点で世界中の名所などを自由に見て回ることができます。東京タワーやアメリカのモニュメント・バレーなどの名所がおすすめとして登録されているので、それを見るだけでも十分に楽しめます。HTC ViveとOculus Riftに対応し、価格は無料です。

UAE VR(アプリ)

引用:UAE VR/App Storeプレビュー

UAE(アラブ首長国連邦)最大のモスク(イスラム教の礼拝堂)シェイク・ザイード・モスクを散策できるアプリ。実際に現地でシェイク・ザイード・モスクに入場する場合は、厳しい服装チェック(男性の短パンNG。女性の髪や肌の露出NGなど)や荷物検査をクリアする必要がありますが、アプリならそのような制限はありません。iOS専用の無料アプリです。

 エッフェル塔のガイドツアー(YouTube動画)

360度ビデオで撮影されたパリのエッフェル塔とその周辺を紹介する4分4秒ほどの動画です。VRゴーグルをつけて視聴すれば、まるで現地の観光ツアーに参加しているかのような気分になることができます。英語の音声ガイド付きです。

まとめ

建設・建設現場でのVRの活用事例を紹介しました。未完成のものを目で見て共有できるようにしたり、遠隔で現場作業ができるようになったりと、建築業界にVR技術は非常にマッチしていると言えるでしょう。今後より多くの場面で利用されていくことと思われますので、動向に注目したいところです。