VRは様々なビジネスシーンに活用されており、ショッピングも例外ではありません。これまでのネット通販では、実物の大きさやサイズ確認などにおいてはどうしても店舗での買い物に劣ってしまいましたが、VRであればこの課題が解決できます。
この記事では、VRのショッピングシーンでの活用事例をご紹介します。
VRが実現する次世代ショッピング体験
ショッピングシーンにおいてVRがもたらす変革、それは「空間を含めたショッピング体験」です。従来のショッピングは、店頭で商品だけを確認するものと、自宅でのネットショッピング等で空間だけを確認するものの解離性にどうしても悩まされる場面がありました。しかし、VRという仮想空間を利用することで、店頭の商品を購入動機に照らし合わせるというシミュレーション性の向上が躍進しています。
より簡単にいうならば、頭の中だけで見取り図を動かしていた家具の配置や、試乗会がなく写真から想像するしかなかった自動車の快適性などを「実際に体験する」ショッピングが、VRの活用により実現するのです。
VRショッピングの事例紹介
現在さまざまな企業がVRショッピング事業に乗り出しており、まさに群雄割拠の体を成しています。方向性も扱う商品もとりどりのVRショッピングをご紹介いたします。
Alibaba、VRショッピングサービス「BUY+」
中国の大手EC企業Alibaba(阿里巴巴/アリババ)は、実際に店舗でショッピングしているかのような体験ができるショッピングサービス「BUY+(バイプラス)」を2016年、中国国内に向けてリリースしました。仮想空間内に作られたショッピングモールを、現実のように歩いて見て回り商品を買い求めることができます。ECショッピングにはない「ついで買い」「ジャケ買い」のような偶然の出会いを提供してくれるサービスです。
「VR PARCO」期間限定オープン
国内の各主要都市に店舗を構えるパルコ(PARCO)グループは、VOYAGE GROUPと協力し昨年新たなショッピング形式の提案としてVRウェブサイト「VR PARCO」を期間限定で公開しました。実際の店内を360度パノラマで撮影した映像を使用しており、かなりの臨場感を体験できるほか、ウェブ上で店頭商品の取り置き・購入ができるサービス「カエルパルコ」と提携して実際に商品を購入できる次世代ショップです。このたびの導入は試験的な位置づけであり常設ではないようですが、これからの展開に期待が持てます。
「STYLY」VRオンラインショッピングプラットフォーム
Psychic VR Lab(サイキックVRラボ)の開発するVRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」は、これまでのショッピングに対する常識を打ち破るショッピング形態を提供してくれました。卓越した技術により、商品は森の緑や青い海などさまざまなシチュエーションで陳列され、近付いて注目すれば素材の材質までリアルに確認することができます。360度あらゆる角度から商品を確かめることはもちろん、衣服の着用状態なども把握できます。
またSTYLYはバーチャルショップではなくプラットフォームのため、個人クリエイターの作品など通常の店舗ではお目にかかれない商品に出会える可能性も魅力のひとつです。
eBay「VR百貨店」
アメリカのインターネットオークション企業eBay(イーベイ)が、オーストラリアの大手百貨店マイヤー社と提携し生まれたのが「VR百貨店」です。実店舗でのショッピングを再現するのではなく、VRだからこそ実現できたTVゲームのアイテムセレクトのような画面は、まるで私たちの想像してきた「近未来」が現実に訪れたようで、普通のショッピングでは得ることのないワクワク感を与えてくれます。
ハコスコ「VR for EC」
VR for ECはVR特有の「世界に入り込める」没入感、「自分ではない誰かになれる」ロールプレイ感をショッピングに昇華した革新的なシステムです。目の前に広がるのはバーチャル店舗でも商品カタログでもなく、言うなれば「動く広告」の世界。ファッションブランド・Room no.8(ルームエイト)の紹介記事と連動し、その撮影風景をVRした世界を訪れることができます。記事のメインアイテムだけでなく、目の前にある衣服やバッグ、アクセサリーなど全てが商品で、視線でカーソルをあわせることで商品詳細のキャプションが表示され、実際に購入することができます。
「Worldpay」が開発するVRの決済システム
ここまで紹介してきたショッピング形態は、いずれも決済の際にはVRゴーグルを取り外し、タップやマウスクリックなどで手続きすることが必須です。しかしこれでは没入感が薄れ、せっかくの楽しい気分が冷めてしまいかねません。そこで決済サービスプロバイダのWorldpay(ワールドペイ)は、VR空間に没入したままキャッシュカードで決済ができるシステム(POC)を発表しました。一定金額未満であればVR内で使える仮想カードを仮想のカード読取機にタップすることで決済でき、一定金額以上の場合は同社が開発した「AirPIN」という新たな技術により認証コードを入力することで決済が可能です。このシステムが導入されれば、VRショッピングが更に快適になるのは間違いないでしょう。
パッケージシステムEC-Orange VR
ECサイトの構築パッケージ「EC-Orange」を提供しているエスキュービズムが、VRの特許技術を持つ株式会社タッグ、高度な映像技術を有する共同印刷社と三社共同で開発しているVR構築パッケージシステム「EC-Orange VR」は、既に広く利用されているEC構築システムにVRを組み込むことによりVR参入への敷居を下げてくれることでしょう。最近では2018年1月10日〜2月6日の期間限定で、セブン&アイ各社の商品が並ぶバレンタインショップが開かれていたこともあり、今注目のシステムです。
みずほと富士通、VRショッピングの実証実験へ
みずほフィナンシャルグループと富士通電工は、VRがもたらす購買体験の向上とそれに伴う金融サービスの提供を目的とした実証実験を行いました。この実験には卓上ディスプレイ型のVR装置「zSpace(ズィースペース)」が採用されており、PRショートムービーのタイトルにもなっている「身近に金融がある未来」の言葉どおり、日常の一部にVRショッピングや金融サービスが組み込まれることを視野に入れた実験であるといえます。
コリアセールフェスタでのVRショッピングモール
韓国の一大ショッピングイベント「コリアセールフェスタ2017」では、VRショッピングモールがお披露目されました。世界初となる大規模VRショッピングサービスで、韓国の大手企業が業種の垣根を越えて参加しました。開催が期間限定のイベント内であったこともあり、恒常的なショッピングモールとして継続されるかは詳細が待たれますが、もしも継続が実現すればショッピング業界は、仮想空間という無限で広大な店舗用地を手に入れることになります。
VR Shopping with Voice Chat
ECショッピングモール「KABUKIペディア」が、実店舗でのショッピングの楽しさをECサイトでも体験してほしいと考案したのが、音声チャットで会話しながらショッピングできるアプリ「VR Shopping with Voice Chat」です。ファッションショーを友人と楽しみながらランウェイを歩くモデルの着用する服をチェック・購入したりと、従来にはないショッピングを目指します。
現在はファッション、インテリアなど視覚的にアピールしやすいジャンルでの展開ですが、今後はKABUKIペディアで取り扱うすべてのジャンルにおいてVRショッピングができるよう改良を進める方針です。
まとめ
リアルなビジュアルを提供できるVRとショッピングの親和性は限りなく高く、これからのショッピングに新たな旋風を巻き起こすことは間違いありません。またご紹介してきた数々の例からも読み取れるように、VRショッピングは画一的なものでなく、各業界各企業の特色溢れる多種多様な世界を見せてくれることでしょう。実店舗、ECサイト、そしてVRがもたらすショッピングの新しい時代は、もうすぐそこまで来ているのです。