スマートグラスやARメガネは、メガネを通して映像やデータを現実世界に重ねて表示させるAR(拡張現実)を体験することができるメガネ型デバイスです。ARグラス、ARゴーグル、ARヘッドセットなどとも呼ばれます。
過去にGoogle Glassが発売されたものの売れなかったので、スマートグラスは広まらないのでは?という話もありましたが、現在多くの企業が開発に参入し、商品化もされています。
そこで、この記事では注目のスマートグラス、ARメガネの12選をご紹介いたします。
スマートグラス、ARメガネとは
スマートグラス、ARメガネは、基本的にレンズを備え、そのレンズにディスプレイもしくはプロジェクタで映像を現実世界に重ねて表示できるものを指します。その基本機能に、カメラ・音声通話機能などが付加されたり、深度センサなどによる位置トラッキング機能が付加されたりします。
これらの処理をするコンピュータ・バッテリーも一体・別体型があり、各種企業が様々なARメガネを開発・販売しています。
【参考記事:ARとは?VRとの違いやビジネス活用事例をご紹介】
スマートグラスとARメガネの違い
スマートグラスとARメガネは、厳密には違うものです。
スマートグラスはメガネを通して付加的な「情報」を表示します。その情報によって知識や理解が増えますが、「現実を拡張」するものではありません。
一方でARグラスは、ARの意味である拡張現実(Augmented Reality)のとおり、現実を増やすものです。映像や画像といったデジタル情報を表示し、本当にそこに存在するかのように現実を拡張します。
ただし、実際はこの2つの言葉は明確に区別されずに混合されているので、この記事でも区別せずに説明していきます。
最新のスマートグラス、ARメガネ12選
ここでは、既に発売中のものから開発中のものまで、業界を代表する企業のデバイスを中心に注目のスマートグラスを12種類紹介します。ご自身に合った用途のものがきっと見つかると思いますので、是非最後までお楽しみください。
Apple Glass
Apple Glassは、Appleが開発中と噂のARメガネです。公式には発表されていませんが、ネット上ではデザインに関して「iPhone Xを連想させるデザイン」「スティーブ・ジョブズ氏の丸メガネ風」など、多数のコンセプト案・意見が飛び交っています。
2020年には発売するとの予測もあり、これらのコンセプトを超える素晴らしい製品を提供してくれることを期待しています。
Google Glass
Google Glassは、Googleの親会社であるAlphabet傘下のXが、ソリューションパートナーを通じて企業向けに提供するスマートグラスです。そのため、個人では購入出来ません(旧型はAmazon等で在庫限り購入可能)。企業向けには、ソリューション(ソフトウェアなど)の内容にもよりますが、20万円程度から提供されています。
製品の特徴として、右目側にプリズムが備えられており、現実世界に重ねて作業手順書などを表示させることが可能です。また、映像や写真を撮影することができます。これらの機能は音声で動作させることが可能で、多数の企業が実際に導入し活用しています。
【参考記事:スマートグラス「Google Glass」とは?機能や価格・購入方法】
Microsoft HoloLens
Microsoft HoloLensは、Microsoftが提供する開発者向けのヘッドセットです。Google Glassと異なり、両目に透過型ホログラムレンズを備えている為、立体視が可能になっています。
また、4つの環境観察カメラ・1つの深度カメラを備え、インサイドアウト方式の位置トラッキングを可能にした他、ジェスチャーによるインタラクティブな操作を可能にしています。MicrosoftではこれをMixed Reality(MR)と呼んでおり、他のARデバイスと一線を画していることがわかります。
視野角が水平30度と狭く(例としてHTC Viveは水平110度)、視野の中心にしか映像を表示できませんが、その分、画素密度が高く高精細の映像を表示することができます。現在個人開発者向けで約33万円と高額ですが、その価値が認められ、製品開発・医療・教育など様々な分野への応用が進められています。
【参考記事:HoloLens(ホロレンズ)とは?MicrosoftのMRデバイス】
Magic Leap One
Magic Leap Oneは、2018年中の出荷を目指してMagic Leapが開発しているARメガネです。詳細は公表されていませんが、デジタルライトフィールドという技術により、リアルとバーチャルをシームレスに繋いだ全く新しい体験ができるとされています。
Lightwareと呼ばれるヘッドセット部には多数のカメラが搭載され、HoloLens同様位置トラッキングを可能にしています。また、この高度な処理を実現しつつも、ヘッドセットを小型にするために、別体のLightpackという小型コンピュータとセットで動作させることがわかっています。
Magic Leapは網膜照射型ディスプレイの研究等で巨額の資金を様々な企業から集めており、その研究成果第一号となる本デバイスは非常に注目を集めています。
Bose AR
Bose ARは、2018年夏頃に開発者版が公開される予定となっている、世界初のオーディオ拡張現実プラットフォームです。先日のSXSW 2018で公開されたプロトタイプ版はサングラス型でしたが、「音」の拡張現実のため、レンズ部への映像表示の機能はありません。
本開発は、位置情報を元にした音声による情報案内など、音の拡張現実提供するプラットフォームの位置付けで、位置情報を取得できるスマートフォンと、従来のヘッドフォンでも実現させることができます。プラットフォームを開発するBoseは、本プラットフォームを活用したアプリを開発する企業への資金提供をする準備も進めており、音の拡張現実は爆発的に普及する可能性を秘めています。
Meta 2
Meta2はHoloLensと非常に似た構成のヘッドセットで、Meta Companyによって開発されました。既に発売開始されており、現在日本でも約25万円で購入することができます。
HoloLensとの違いは大きく2点で、1つ目は視野角です。HoloLensは画素密度を優先し視野角が水平30度と非常に狭いですが、Meta2は90度とARヘッドセットとしては広い視野角を確保しています。その分画素が荒く映像が暗くなりますが、大きなものでも全体が捉えやすくなっています。
2つ目はPCが必要なことです。HoloLensはスタンドアロンですが、Meta2はPCとHDMI・USB3.0で接続して使用します。ワイヤレスで動きやすいのはHoloLens、内臓コンピュータの性能に依存せず、適切な性能のコンピュータを選ぶことができるのがMeta2です。HoloLensとの差額では、Meta2の動作に必要なPCは購入できませんので、既にPCを持った開発者の方には特におすすめのデバイスです。
EPSON MOVERIO
EPSON MOVERIOには、映像視聴に主眼を置いたMOVERIOと、製造業などでの活用を想定したMOVERIO Proがあります。どちらも基盤となる技術は、両眼シースルーの高コントラストディスプレイです。
一般ユーザーを想定したMOVERIOは、有機ELを搭載し最大320インチの大画面映像を楽しむことができます。一方、MOVERIO Proは現場のニーズに応えるべく、防塵・防滴性能や、はねあげ機構が搭載されています。MOVERIOは約7万円、MOVERIO Proは約20万円で購入可能です。
DAQRI Smart Glasses
DAQRI Smart Glassesは、DAQRIが開発したARメガネです。製造業や建築業などの現場作業、メンテナンスや修理などの分野での活用が想定されています。
DAQRIはDell、オラクル、IBM、Autodesk、シーメンス、Emersonなど複数の企業と提携し、共同で開発を進めています。価格は約55万円で、公式HPから購入することができます。
WaveOptics
WaveOpticsはイギリスの企業で、AR用ディスプレイの開発をしています。ディスプレイの単品・モジュール・デベロッパーキットの提供が予定されています。
ディスプレイの特徴は映像入力部と出力部を備えていることで、レンズ内部で映像が広がり、広い視野で映像を表示させることができることです。映像を体験していないので実力は未知数ですが、大手が採用すれば一気に業界の標準方式となりうる可能性があります。
M300スマートグラス
M300スマートグラスは、Google Glassと似た構成のスマートグラスで、Vuzixによって開発されました。現在約20万円で発売されています。
他のスマートグラスにない特徴として、映像表示部を左右付け替えることで、右目・左目のどちらにでも映像を表示することができます。Vuzixは以前からヘッドセットやスマートグラスの展開をしており、本製品の旧型のM100は数千台販売されています。この多数のユーザーの声を集めて作られたM300は、スマートグラスの完成形と言っても過言ではありません。
Vuzix Blade
Vuzix Bladeは、M300スマートグラスを開発したVuzixの次世代デバイスです。サングラスと変わらない大きさのメガネ型デバイスで、2018年夏に12万円で開発者向けに出荷が開始されます。
公式ホームページの動画から機能を読み解くと、カメラは搭載されていますが位置トラッキングはできず、コンテンツは視界の中の固定された位置に表示されます。また、スマートフォンと連携して通話をすることが可能です。
小型なためバッテリー駆動時間が気になりますが、常に装着していたくなるこのデザインのままリリースされることを期待しています。
Mira Prism
Mira Prismはスマートフォンを挿して使用するARメガネで、2017年秋に99ドルで開発者向けにリリースされました。
使用方法は非常に簡単で、スマートフォンに専用アプリをインストールして、スマートフォンをセットするだけです。見え方はスマートフォンの機種に依存しますが、少なくともiPhoneに関しては様々なサイズに対応することが計画されています。
他のARメガネと比較しても圧倒的に安く、普及する可能性を秘めていますが、スマートフォンの処理能力を考慮すると簡単なゲーム等の体験にとどまる可能性が高いと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。スマートグラスやARメガネは、体験して初めてその良し悪しがわかる側面もあります。この分野は今大変盛り上がっており、毎月のように各種展示会に出展されていますので、気になったものは是非体験してみてください。