VRコンテンツを楽しんでいると、乗り物酔いと似た症状になることがあります。いわゆる「VR酔い」と呼ばれるものです。PSVRが発売された当初、VR酔いになる人が多く出ました。自分もVR酔いになってしまうのではないかと心配な人は多いのではないでしょうか?

そこで、VR酔いの症状や原因、防ぐための対策やなってしまった時の対処方法などについて説明します。

VR酔いはどんな症状?

VRコンテンツを楽しむ際には主にVRHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を使って、仮想空間の映像を視覚として取得して体験することができます。しかしその際、まるで車や船に乗っている時に酔ったかのような症状である「VR酔い」になってしまうことがあります。この「VR酔い」の症状としては、胃のむかつき、吐き気、頭痛、目まいや異常な汗、不快感などがあります。体験する人によって症状の発生や時間に差はありますが、早い人だとVRを体験し始めて1~2分で症状が出るという人もいます。

VR酔いの原因

ただHMDを装着して、違う景色を見ているだけのはずなのにどうしてこのような症状が出てくるのか、VR酔いになってしまう原因とは何なのでしょうか。このVR酔いの原因になるものとしてはいくつかの理由が考えられています。

視覚と感覚のズレによって起こる

VR酔いの原因として有力なものに「視覚と感覚のズレ(感覚不一致)」説があります。

乗り物酔いが生じるのは、体は止まっているのに視覚では進んでいるように感じることによります。平衡感覚を調整する三半規管が、車や船の動きに反応しすぎてしまうことから酔いが生じるのです。

VR酔いの場合も同様に、目で見えているVR空間上の視覚情報と、三半規管から得られる感覚情報のミスマッチによって脳が混乱することから酔いが生じると考えられています。

VR酔いが起こりやすい状況

VRを体験する環境の変化によっても、酔いが起こりやすくなる場合があります。いくつか考えることができますが、画面の映像が急激に変化する、画面内の激しい明滅、暗い部屋の中、身体に疲れがたまっている、長時間連続の使用、雨や靄などで視界が悪い映像環境などがあります。特に、身体に疲労がたまっている状態である場合、体の中にある様々な調節機能が働くなるため、VR酔いが起こりやすくなってしまいます。

VR酔いを防ぐための対策

酔ってしまうことで逆に気分が悪くなったり、十分にコンテンツを体験できなかったりするなど、VRコンテンツを楽しむはずがつらい症状に悩まされてしまうことになってしまう可能性があります。このVR酔いを防ぐための対策としてはいくつかの方法が考えられます。

ヘッドセットを正しく装着し、焦点を合わせる

VRを体験する際には専用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着することによって、全方向の映像コンテンツを体験することができます。しかしその際、ヘッドセットが少しずれていたり、サイズ調整を行わずにゆとりが大きかったり、焦点が合っていない状態で装着していると、コンテンツの体験に影響が生じます。同時に、視界が悪くなったり、頭の動きとのずれが大きくなったりするためVR酔いにもなりやすくなってしまいます。そのため、ヘッドセットは正しい装着の仕方を守り、画面の焦点を合わせるよう調整を行うことが必要です。

酔い止めの薬を飲んでおく

車や船などの乗り物酔いと同様に、VR酔いを防ぐための対策として酔い止めの薬を飲んでおくことも有効です。酔い止めの薬を飲んでおくことで、酔いを予防することができます。その際水分をしっかりとることも重要です。

頭を動かすときはゆっくり動かす

VRのヘッドセットは、頭の動きを正確にトラッキングすることによって、画面に映し出される映像にも動きを反映して表示しています。このことによって、体験者が見たい方向の映像をリアルタイムにみることができるのですが、使い方によっては体に大きな負担をかけてしまいかねません。頭を素早く振ったり、方向転換を繰り返したりしていては、画面内の映像も急激に切り替わってしまい、視界から受け取る情報量が許容できる範囲を超えてしまいます。そうなった場合に酔いが起こってしまうので、頭を動かすときはできるだけゆっくり動かし、無理な動作を控えるようにしましょう。

十分な睡眠をとっておく

体に疲労がたまっている状態では、VR酔いになりやすくなってしまいます。特に睡眠時間が短いと、体の機能がうまく働かないため、酔いやすくなってしまう状態になっています。前日の睡眠時間が短い場合や、体が疲れているなと感じる際にはVRコンテンツの体験を控えることも検討する必要があります。体に無理のない範囲で体験を行うことが、VRコンテンツを楽しむためにも重要なポイントです。

慣れるのを待って克服する

初めてVRを体験する人や、経験が少ない人にとってはVR酔いになりやすい状態といえます。最初からあまり無理をしないで、ゆっくりVR環境に慣れていく必要があります。なれない状態で無理に続けてしまうと、VR酔いが起こって体調が悪くなってしまいかねません。そのため、まだVRにあまり慣れておらず、気分がよくないなと感じるときにはプレイを中断し、休憩をこまめにはさむことが必要です。

酔いにくいコンテンツを選ぶ

VRコンテンツにはゲームや動画、アプリケーションなど様々なジャンルにおいてたくさんのものが提供されていますが、コンテンツによってVR酔いを起こしやすいものが存在します。中でも、急激な画面切り替えや、激しい明滅、頭を早く動かす必要があるコンテンツなどはVR酔いになりやすいです。また、内容によっても刺激の強いものである場合、体に負担になることが多いため、体験するコンテンツは自分に合ったものを選んでプレイするようにしましょう。

VR酔いになってしまったときの対処

酔い止めの対策をしていたとしても、人によってはVR酔いを起こしてしまう可能性があります。もし酔ってしまった場合にはどのような対処を行えばよいのかご説明していきます。

中断する

まずVR酔いになってしまった場合には、すぐに中断をすることをおすすめします。そのまま無理して続けていても、症状はなかなか回復していきません。気分が悪くなったり、少し体調が悪くなりそうだなという違和感がある場合にはすぐに中断し、水分をとったり栄養補給をしたり、休憩を挟むようにしましょう。定期的に休憩をはさむことは、酔いを防ぐためだけでなく、体の疲れや神経を休ませるために必要な時間です。

横になって休む

休憩する際には横になって休むことをおすすめします。ヘッドセットを装着している間は頭を常に起こしている状態であり、体にとっても非常に負担となる姿勢を保っている状態が続いています。そのため、横になって休むことで体の負担を軽減することができるとともに、気分をすっきりさせることができます。また、目を休めるためにも軽く目を閉じて休憩するとより疲れをとることができます。

クールダウンする

ヘッドセットを装着している間はとても脳が興奮している状態です。そのため、脳を落ち着かせVR酔いを防ぐためにはクールダウンさせることが有効です。水分や栄養をしっかりととったり、目をホットタオルで温めたりすることで神経を落ち着かせることで、副交感神経を働かせ、興奮状態を鎮めることができます。長時間の興奮状態は脳や体にとって非常にストレスがかかる環境のため、定期的なクールダウンをとることが必要です。

VR酔いについて研究は進んでいる

VRはこれからより皆さんの生活の近くに広まっていこうとしていますが、同時に、VR酔いへの対策方法についても研究が行われています。

トンネリング

「視覚と感覚のズレ」によって、脳が混乱することでVR酔いが生じてしまうということをこれまでにお伝えしました。「トンネリング」とは、その視覚と感覚のズレを抑えるために研究されている方法です。画面全体を移動させるのではなく、特定部分以外の映像を固定することによって、テレビの画面が移動しているだけのように画面を表示する方法です。体が動いていると脳が認識することがないため、感覚のズレが起こりにくくなり、酔いにくくなるということでGoogle Earth VRでは既に採用されています。

テレポート

VRゲームなどで移動をする際に用いられている移動方法の一つです。実際の現実空間で歩いている時の映像をそのまま VR 環境で再現しようとした場合、画面の揺れが非常に大きく激しいものとなってしまいます。そのため、移動元から移動先の場所へ瞬間的に移動する「テレポート」という手段を使って移動するという方法が採用されているコンテンツも存在します。移動シーンがないため、画面の揺れを抑えることができ、酔いを防ぐ効果があります。移動する際、位置関係を把握しやすくするために、どの方向に移動しているかをエフェクトで表示するなどといった表現方法も研究されています。

回転の角度を小さくする

VR世界では、頭に装着しているヘッドセットの動きに応じてみたい方向の映像を見ることが可能になっています。しかし、ユーザや環境によっては、体を動かして360度回転するといったことができない場合があります。その際の回転方法としては、コントローラーによる回転が可能ですが、頭を動かしていない状況でコントローラーを使って視界が変化していくことは脳にとって非常に大きな負担となります。そのため、感覚のズレが非常に大きくなり、VR酔いしやすい状態になってしまいます。この対策として、回転の角度に制限が必要なのではないかとGoogleは提案しています。人間の感覚認識の研究がVR体験を楽しむための方法としても研究し、利用されています。

まとめ

VR酔いについて説明いたしました。VRを楽しく体験するためには、機器を正しく装着し、体や環境を整えるなどのVR酔い対策をしっかりと行うことが大切になってきます。また、酔ってしまった場合にはただちに中断して休憩するなど、素早く対処することが重要です。

船酔いをする船乗りはいません。体質にもよりますが、VRは何度も体験していれば慣れてきて、VR酔いに強くなっていきます。無理のない範囲で少しずつ楽しむようにしてください。

投稿者 vradmin